自然や季節のある暮らしに惹かれ、都市を離れて田舎に移り猟師になりたいと考える人は増えています。
しかし移住先選びや自治体対応、狩猟免許や猟銃所持許可の取得、猟具や住居の準備など、越えるべき壁が多く途方に暮れることもあります。
この記事では行政手続きや講習、猟友会加入、猟具保管や安全管理、生活収支の立て方まで実務的に整理して紹介します。
移住先選定から免許の種類と申請、猟具管理、解体技術、収益化まで各章で具体的に解説します。
まずは最初に確認すべきポイントから読み進めて、無理なく地域に溶け込みながら猟師生活を始めるための道筋を掴んでください。
田舎移住で猟師になる方法
田舎に移住して猟師になるには、計画と地域理解が欠かせません。
自然との共生を前提に、免許や許可、生活基盤を順序立てて整えていきます。
移住先選定
まずは狩猟に適した土地を選ぶことが大切です。
獣害の発生状況や森林面積、道路アクセスを確認すると良いでしょう。
- 獣害発生頻度
- 森林面積と地形
- 最寄りの射撃場や講習会場
- 医療と買い物の利便性
- 住民の受け入れ度合い
現地に何度か足を運び、朝夕の様子や地元の掲示板をチェックしてください。
受け入れ自治体
移住先の自治体によっては、移住者向けの支援や補助金が用意されています。
狩猟を仕事や生活の一部にしたい旨を事前に相談すると、地域の期待やルールが分かりやすくなります。
自治体窓口だけでなく、地域おこし協力隊や農林課、鳥獣対策担当にも接触しておくと安心です。
狩猟免許取得
狩猟免許は種類ごとに講習と試験が必要です。
予備講習を受けてから筆記と実技を受験する流れが一般的です。
学科では法令や安全管理が問われますので、過去問や参考書で準備してください。
猟銃所持許可
猟銃を所持するには更に別の講習と厳格な審査が課されます。
申請書類のほかに身辺調査や保管場所の確認が行われますので、事前に保管環境を整えておきましょう。
許可が下りるまで時間を要する場合がありますから、余裕を持って手続きを進めてください。
猟友会加入
地域の猟友会に加入すると、先輩から実地のノウハウを学べます。
共同での駆除や安全確認、講習情報の共有などメリットが多いです。
会費や参加ルールを事前に確認し、活動への参加頻度を相談しておくと良いでしょう。
住居
住まいは射場や里山へのアクセスを考えて選んでください。
最初は賃貸で様子を見ることをおすすめします。
保管スペースや作業場の確保、冬季の寒さ対策も重要です。
猟具保管
猟具と銃器の保管は法律に従い、安全第一で行う必要があります。
| 保管場所 | ポイント |
|---|---|
| 屋内専用金庫 | 鍵管理厳重 |
| 鍵付き物置 | 固定式設置 |
| 指定保管庫 | 登録明確化 |
保管場所は自治体や警察の確認を受け、定期的な点検を怠らないでください。
生活収支計画
猟師としての収入は季節変動が大きく、複数の収入源を想定する必要があります。
有害鳥獣駆除契約やジビエ販売、兼業での地元雇用などを組み合わせると安定しやすいです。
初期費用として免許取得費や装備費、住居費を見込み、最低1年分の生活費を確保してください。
地域ルール
地域ごとに狩猟の慣習や暗黙のルールが存在します。
狩猟期間や立ち入り禁止区域、近隣への配慮事項を必ず確認して守ってください。
地元住民と良好な関係を築くことが、長く安全に活動するための最大の鍵になります。
狩猟免許の種類
狩猟を始めるには、まずどの免許が必要かを知ることが大切です。
免許の種類によって使える道具や対象となる獲物が変わり、狩猟の方法や活動範囲も異なります。
第一種銃猟免許
第一種銃猟免許は、銃を使った狩猟で最も包括的な免許にあたります。
散弾銃と小銃の双方を扱える場合が多く、山間部での大型獣の狩猟にも対応できる点が特徴です。
取得には射撃技術だけでなく、安全管理や所持許可に関する講習が必須となります。
| 免許名 | 対象銃 |
|---|---|
| 第一種銃猟免許 | 散弾銃とライフル |
| 第二種銃猟免許 | 散弾銃のみ |
第二種銃猟免許
第二種銃猟免許は、主に散弾銃に限定した免許です。
鳥獣を速やかに仕留める用途に向いていて、射撃姿勢や弾の扱い方が重視されます。
第一種に比べて扱える銃種が少ない分、所持許可や訓練の負担が若干軽くなる場合があります。
わな猟免許
わな猟免許は、ワナを用いて動物を捕獲するための免許です。
銃とは違い発砲の危険が少ない反面、設置場所や方法に細かなルールがあります。
- 箱わな
- くくりわな
- 置きわな
地域ごとに設置可能なわなの種類や時期の制限があるため、自治体の指導を確認してから始めることをおすすめします。
網猟免許
網猟免許は、鳥や小動物を網で捕らえる方法に用いる免許です。
集団での作業や素早い収集が求められることがあり、連携や経験が重要になります。
環境保全や生態系への影響にも配慮が必要で、事前の学習と地域との調整が欠かせません。
申請手続きと必要書類
田舎へ移住して猟師を目指す場合、狩猟免許や猟銃所持許可の手続きは早めに進めておくと安心です。
申請の流れは複数の講習と試験、さらに警察による審査が含まれますので、スケジュールに余裕を持って行動してください。
予備講習受講
予備講習は狩猟の基礎知識や法律、動物保護の考え方を学ぶ導入講座です。
都道府県ごとに開催時期や会場が異なり、地方の自治体や猟友会が案内を出します。
講習は半日から1日程度で、受講後に狩猟免許試験の受験資格が与えられる場合が多いです。
持ち物や受講料は案内に記載されていますので、事前確認を忘れないでください。
狩猟免許試験受験
狩猟免許試験は筆記と実技の二本立てが基本で、法令の理解と安全管理能力が重視されます。
出題範囲は狩猟鳥獣や猟具の取り扱い、銃器に関する法律などで、過去問題を繰り返すと合格率が上がります。
実技では射撃の基礎やわなの設置方法が問われることがあり、教習で実務経験を積んでおくと有利です。
合格後は狩猟免許証が交付され、狩猟活動を行う際の基本資格が整います。
猟銃講習受講
猟銃を所持する場合は、猟銃講習を受講して安全な取り扱いと保管方法を学ぶ必要があります。
講習は座学と実射訓練の組み合わせで行われ、銃の分解整備や事故防止の具体的な手順が教えられます。
銃の所持許可申請前に講習を修了しておくことで、警察の審査時に有利になる場合が多いです。
受講場所は指定射撃場や講習会場で、定員や開催日程は各都道府県の案内をご確認ください。
猟銃所持許可申請
猟銃所持許可の申請は都道府県警察の所轄窓口で行い、身辺調査や保管場所の確認が実施されます。
申請から許可までには一定の期間がかかりますので、猟期に間に合わせたい場合は余裕を持って申請してください。
| 申請段階 | 内容と目安 |
|---|---|
| 事前準備 講習受講 |
猟銃講習受講 狩猟免許取得 |
| 申請提出 | 都道府県警へ申請書提出 面接と身辺調査 |
| 保管場所確認 | 警察による実地確認 保管庫の設置確認 |
| 許可交付 | 審査通過後交付 所持開始 |
必要書類一覧
申請に必要な書類は揃っていることを二重に確認してください。
- 狩猟免許証の写し
- 猟銃講習修了証の写し
- 申請書(所定様式)
- 身分証明書(運転免許証等)の写し
- 住居の賃貸契約書または所有証明
- 保管庫の図面または写真
- 健康診断書または精神科の受診履歴に関する申告書
- 身辺調査に必要な連絡先情報
自治体や警察署によって追加で求められる書類があるため、申請前に必ず窓口で最新情報を確認してください。
実践スキルと安全管理
実践的な技術と安全管理は、田舎で猟師として暮らすための基盤です。
この章では射撃訓練から応急処置まで、現場で役立つポイントを具体的に解説します。
射撃訓練
銃の扱いは繰り返しの練習で身につきます。
安全確認、セイフティの操作、基本姿勢と呼吸法をまず習得しましょう。
実射は射撃場や猟友会の練習会で行い、経験を積んでください。
的確な命中精度よりも、確実な安全管理を優先する意識が重要です。
下表は練習メニューの一例です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 基礎姿勢 呼吸法 照準の合わせ方 反動制御 |
週1回以上 週1回のドリル 実射月2回 反動練習月1回 |
弾薬の種類ごとに反動や着弾点が変わりますので、必ず実弾で調整してください。
夜間や立木の多い場所では、意図しない跳弾や視界不良が発生しやすいので避ける方が安全です。
わな設置技術
わな猟は動物の習性を読む力が求められます。
設置場所の選定、餌やフンの確認、踏み跡の分析が成功のカギになります。
- 箱わな
- くくりわな
- 通り道の整備
- 定期点検のルーティン
わな設置は法令や地域ルールを厳守し、補助金や講習の情報を活用してください。
衛生的な解体
解体は獲物を傷つけず、肉質を守るための重要な工程です。
まずは速やかな放血と冷却を行い、内臓は清潔な環境で処理してください。
包丁やまな板は消毒を行い、使用後は十分に乾燥させましょう。
必要なら地域の解体場や衛生講習を利用すると安心です。
緊急時の応急処置
山中での怪我や大量出血は迅速な対応が命綱になります。
止血は圧迫を基本にし、骨折が疑われる場合は患部を固定して動かさないでください。
携帯電話の圏外対策として、無線やGPS発信機を常備すると救助がスムーズになります。
心肺停止時は心臓マッサージとAEDの使用をためらわず行ってください。
安全管理ルール
猟に出る前は当日の天候や狩猟エリアの情報を必ず確認してください。
単独行動は避け、同行者と合図や行動範囲を共有する習慣をつけましょう。
銃の装填と弾薬管理は厳格に行い、車両や住居での保管時にも安全措置を徹底する必要があります。
不明点やトラブルは地域の猟友会や自治体に相談すれば、適切なアドバイスが得られます。
地域での収益化と仕事の見つけ方
田舎で猟師として暮らす際、狩猟そのもの以外に収益源を持つことが安定の鍵になります。
狩猟スキルを地域資源に変える方法をいくつか紹介します、実践的な手順と注意点を交えて解説します。
有害駆除契約
自治体や農業協同組合が募集する有害鳥獣駆除の契約は、最も安定した収入源の一つです。
駆除対象や報酬体系は自治体ごとに異なりますので、移住前に担当部署へ連絡して条件を確認することをおすすめします。
契約には定期的な報告や捕獲個体の処理方法の遵守が求められることが多く、手続きとルールを守る必要があります。
実績を積めば複数の自治体や集落と契約を結べる場合があり、収入が増える可能性があります。
ジビエ利活用
ジビエは適切な処理とマーケティングで高い付加価値を生み出します。
- 飲食店との提携
- 加工業者への販売
- 直売所での販売
- 冷凍加工してオンライン販売
衛生管理とトレーサビリティの確保が重要で、処理施設の利用や衛生講習の受講が必要になります。
地域ブランド化やイベント出店で知名度を上げると、継続的な需要をつくりやすくなります。
地方の雇用機会
猟の技術を活かせる仕事は意外と多様です、下の表で主要な職種の特徴を比較します。
| 仕事の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 有害駆除スタッフ | 固定報酬がある場合が多い |
| 猟場管理員 | 保守管理や案内業務を兼務 |
| ジビエ加工スタッフ | 加工技術が身につく |
| 観光狩猟ガイド | ガイドと教育を担当 |
求人はハローワークや地域の交流会で見つかることが多く、地元ネットワークの構築が早道です。
兼業パターン
猟師と農業や林業を組み合わせる兼業は相性が良く、季節で仕事を切り替えられます。
例えば、冬季は駆除やジビエ加工に集中して、春から秋は農作業や林業の手伝いで収入を補う方法があります。
兼業にする際は税務や保険の扱いが変わる場合があるため、事前に相談窓口で確認しておくと安心です。
また、副業として狩猟教室や講演を行うことで、知名度と収入の両方を増やすことができます。
移住後の初動優先事項
移住後はまず地域への挨拶と自治体窓口での生活手続きから始めてください。
次に住居の安全確認と猟具の保管場所確保、保険やごみ出しのルール確認を優先します。
猟友会や近隣の猟師との顔合わせで現地ルールや狩猟区域を把握し、安全な狩猟計画を立ててください。
射撃訓練と応急処置の取得、必要な許可申請の進行を並行して進めることをおすすめします。
最後に収支計画と収益化の見通しを作り、無理なく地域に根付く準備を整えましょう。
