空き家の放置で騒音や不審者、害獣発生など近隣トラブルに悩んでいませんか。
被害が続くのに、どの窓口に相談し何を準備すれば解決につながるのか分からず不安を抱えている方は多いはずです。
本記事は各行政機関や警察、法務局、弁護士の役割と段階的な対応手順を整理して示します。
登記簿や写真・動画、日時記録、近隣聞き取りなど、行政に提出する有効な証拠の集め方も具体的に解説します。
まずは初動で優先すべき対応を確認して、次章から窓口別の手順を順に見ていきましょう。
空き家の苦情はどこに相談するか
空き家に関する苦情は、問題の種類によって相談先が変わります。
早めに正しい窓口に連絡することで、解決までの時間を短くできます。
市区町村窓口
まずはお住まいの市区町村の窓口に相談するのが基本です。
総合窓口や住民サービス課で案内を受けられますし、担当部署への取り次ぎもしてもらえます。
苦情の内容や緊急度を伝えると、適切な担当課に振り分けてもらえます。
建築指導課
建物の老朽化や倒壊の恐れがある場合は建築指導課が対応します。
違法建築や危険な改修が疑われるときもこちらで調査が入ることが多いです。
現地調査の依頼や立ち入り点検の要請は、建築指導課が窓口になります。
生活環境担当課
雑草の繁茂や不法投棄、騒音など日常生活に関わる苦情は生活環境担当課へ相談してください。
多くの自治体で周辺環境を守るための指導や、改善命令の発出が可能です。
定期的なパトロールや周辺住民からの通報をきっかけに対応してくれる場合もあります。
保健所
害虫やネズミの発生、不衛生な状況が見られるときは保健所に連絡してください。
衛生上の危険がある場合は、消毒や改善指導を行うことができます。
感染症のリスクが懸念される場合は、迅速に保健所に相談することをお勧めします。
消防署
空き家周辺で火気の使用や放火の疑いがある場合は消防署に通報してください。
防火対策の助言や危険箇所の指導を受けることができます。
万が一火災の兆候があるときは、ためらわずに119番通報してください。
警察署
不審者の出入りや窃盗、放置自転車や不法占拠など犯罪に関わる事案は警察署が担当します。
被害を防ぐためにも、目撃情報や状況を具体的に伝えることが重要です。
- 不審者の出入り
- 夜間の荷物搬出
- 不法占拠の疑い
- 器物損壊や放火の兆候
緊急性が高い場合は110番通報を行い、そうでない場合は最寄りの交番や相談窓口に連絡してください。
法務局(登記)
所有者の特定や権利関係の確認には法務局での登記簿閲覧が有効です。
登記情報により名義人や抵当権の有無が分かり、今後の対応方針を決めやすくなります。
| 確認項目 | 内容例 |
|---|---|
| 所有者 | 氏名または法人名 |
| 住所 | 登記上の住所 |
| 抵当権 | 金融機関の有無 |
| 地番 | 土地の番号 |
公的記録は証拠としても有力ですので、必要に応じて写しを取得してください。
弁護士
所有者が特定できない、または協力を得られない場合は弁護士に相談するのが有効です。
法的手段の選択や仮処分、差止め請求など、具体的な手続きについて助言を受けられます。
交渉や裁判が必要になったときは、早めに弁護士へ相談して戦略を立てることが重要です。
空き家所有者の調べ方と証拠の集め方
空き家問題を行政に相談したり、法的手続きを進めたりするには、所有者を特定し、確かな証拠をそろえることが重要です。
ここでは役所や法務局での取得方法から、現地での記録の取り方まで、実践的に説明します。
登記簿謄本取得
まずは登記簿謄本で所有者名や住所、所有権の状況を確認します。
登記簿は法務局で取得でき、オンラインでの請求も可能です。
| 取得先 | 取得に必要な情報 |
|---|---|
| 地元の法務局窓口 登記・供託オンライン申請 |
地番または住居表示 申請者の本人確認書類 |
| 代理申請可能 | 委任状の準備 |
登記情報には氏名のほか、共有者や抵当権の有無なども記載されていますので、トラブル対応に役立ちます。
固定資産税台帳照会
市区町村の資産税課に照会すると、固定資産税台帳の情報から所有者の住所や課税状況を確認できる場合があります。
ただし個人情報保護の観点から、開示には制限や手続きが必要ですので、まずは窓口で取得要件を確認してください。
照会には地番や課税台帳番号があると手続きがスムーズです。
照会の結果を行政対応の証拠として利用する際は、照会日時や担当者名を控えておくと安心です。
現地写真
現地での証拠収集は写真が基本です。
- 建物外観
- 損壊箇所や危険箇所
- 出入口や施錠状況
- 周辺の状況と住所表示
- 害虫やゴミの堆積状況
撮影時は広角で全体像を押さえ、必要に応じて接写で詳細を残してください。
可能なら撮影位置のメモを残し、同じ場所から時系列で撮ると比較が容易になります。
動画記録
動画は静止画では伝わりにくい状況を示せる強力な証拠です。
敷地に出入りする不審人物の動きや、建物の揺れや倒壊の危険性などを動画で記録してください。
録画時には開始と終了の日時がわかるようにし、音声も残すと状況説明が簡潔になります。
ファイルは消失を避けるため、撮影後すぐにクラウドや別媒体にバックアップしてください。
日時記録
いつ、誰が、何を見たかを時系列で記録することは、証拠の信用性を高めます。
写真や動画のファイル名に日時を入れるか、メモで撮影時刻を必ず記録してください。
気象状況や音の有無など、当日の状況を簡潔に書き留めると後からの説明が楽になります。
近隣聞き取り
近所の方の目撃情報は、継続的な迷惑行為や出入り状況を裏付ける重要な証言になります。
聞き取りは丁寧に依頼し、可能なら口頭だけでなく簡単な記録や署名をいただくと証拠性が高まります。
聞き取り内容には日時と場所、証言者の連絡先を明記し、同意のもとで記録するようにしてください。
プライバシーに配慮しつつ、継続的な問題がある場合は証言をまとめて行政へ提出しましょう。
行政へ正式に申し立てる手順
空き家に関する問題を行政に正式に申し立てる際は、準備と記録が非常に重要です。
口頭や電話での通報だけで終わらせず、書面での提出と証拠添付で正式な手続きを残すことを心がけてください。
書面提出
まずは自治体の担当窓口宛てに書面で申し立てを行ってください。
書面は窓口持参、郵送、または自治体のオンラインフォームのいずれかで提出できます。
提出時には受理印や受付番号の発行を求め、受領証を受け取って保存してください。
| 必要書類 | 目的 |
|---|---|
| 申立書の写し | 事実関係の整理 |
| 住所や地番が分かる資料 | 対象物件の特定 |
| 証拠写真や動画の一覧 | 問題の立証 |
| 連絡先の明示 | 行政からの連絡確保 |
口頭通報記録
電話や窓口で口頭通報を行った場合は、必ず通報内容の記録を残してください。
記録には通報日時、担当者名、部署名、応対内容の要点を含めてください。
可能であれば通報時の受付番号や担当窓口の内線番号をメモしておくと後の追跡が容易になります。
応対が不十分だと感じた場合は、後で書面での再提出や上位部署への照会を行う準備をしておくと安心です。
証拠添付
申し立て書に添付する証拠は、形式的にも内容的にも分かりやすく整理しておくことが重要です。
証拠は複製を用意し、原本は手元に残すか、必要に応じてコピーを提出してください。
- 現地写真
- 動画ファイル
- 登記簿謄本の写し
- 固定資産税関連の資料
- 近隣の聞き取りメモ
ファイル名や日付順に並べ、提出物目録を添付すると担当者の確認が速くなります。
デジタルファイルを提出する場合は、ファイル形式や容量制限を事前に確認してください。
現地確認依頼
書面提出の際には、必ず現地確認の実施を依頼してください。
現地確認のタイミングや調査項目について、担当部署とすり合わせをしておくと効率的です。
行政が現地確認を行った場合は、その結果の通知を文書で求め、今後の対応予定を明確にしてもらいましょう。
もし一定期間内に現地確認が行われない場合は、催促の書面を送るか、相談窓口で進捗確認を行ってください。
警察・消防・保健所に連絡すべきケース
空き家で危険や迷惑が生じた場合、自治体窓口だけでなく警察・消防・保健所へも速やかに相談すべき場面があります。
緊急性の有無を見極めることが重要です。
以下に具体的なケースと対応の目安をまとめます。
不審者出入り
空き家に不審者が出入りしていると感じたら、まずは警察へ連絡してください。
侵入者の有無や不審な活動は、見過ごすと近隣住民の安全に直結します。
- 夜間の頻繁な出入り
- 人の気配や物音が絶えない
- 不審な荷物の受け渡し
- 窓や扉の破損
- 無断の改装や物の搬出入
侵入や暴力行為がある場合は通報を躊躇しないでください。
火災危険
空き家は放置された可燃物や老朽配線により火災の危険が高まります。
火や煙を確認したり、焦げ臭さを感じたら迷わず消防署へ連絡してください。
近隣への延焼が懸念される場合は、早急な通報が被害拡大を防ぎます。
通報時には建物の住所や見える範囲での状況、近隣の危険性を伝えると対応が早くなります。
衛生害虫発生
ネズミやゴキブリ、ハチなどの大量発生は近隣住民の健康被害につながります。
衛生上の問題があると感じたら、まずは保健所に相談して指導や調査を受けてください。
自治体で対応が難しい場合は、保健所が業者紹介や駆除方法の助言をしてくれることがあります。
写真や発生状況の記録を残しておくと、保健所の調査や後続対応がスムーズになります。
建物倒壊危険
外壁の大きなひび割れや柱や梁の変形が見られる場合は倒壊の危険があります。
その場で建物に近づかず、まずは消防署と自治体へ連絡してください。
| 兆候 | 推奨対応 |
|---|---|
| 大きなひび割れ | 避難指示と立ち入り禁止 |
| 傾きや沈下 | 専門家による緊急調査 |
| 外壁の崩落 | 即時通報と周辺避難 |
緊急性が高い場合は、自身と周囲の安全を最優先に行動してください。
可能なら遠方から写真を撮り、日時を明確にしておくと行政や消防の判断が速くなります。
法的手段と弁護士の活用方法
空き家問題を行政に任せても改善しない場合には、法的手段が有効な手段になります。
ここでは代表的な訴訟や申立ての種類と、弁護士に相談すべきタイミングや準備事項を分かりやすく説明します。
仮処分申立
仮処分は緊急性が高い場合に、裁判所が暫定的に行動を命じる手続きです。
例えば不法占拠者の退去や危険行為の停止を速やかに求めたいときに使われます。
成立すれば直ちに相手に対して行為の中止などが命じられ、行政対応より短期間で効果が現れることが期待できます。
ただし、仮処分は証拠の提出と緊急性の立証が厳格ですので、十分な準備が不可欠になります。
弁護士は緊急性の整理や書面作成、仮差押えなどの手続きと併せて助言します。
準備書類の例は次のとおりです。
- 登記簿謄本
- 現地写真
- 日時記録
- 近隣の証言メモ
- 被害状況の詳細メモ
差止請求
差止請求は相手の侵害行為を将来にわたってやめさせるための民事上の請求です。
持続的な迷惑行為や危険行為に対して恒久的な解決を図りたいときに用いられます。
裁判では侵害の継続性と法的根拠を示す必要があり、仮処分とは異なり最終判断まで時間がかかる傾向があります。
弁護士は請求の立証計画を立て、必要な証拠収集の指示を出しますので、個人で対応するより勝算が上がります。
損害賠償請求
空き家が原因で物的損害や精神的苦痛、近隣への営業損失などが生じた場合には損害賠償を請求できます。
重要なのは損害と空き家の因果関係を示すことで、領収書や修繕見積もり、専門家の診断書が有力な証拠になります。
請求額の算定や過失相殺の解釈など専門的判断が必要ですから、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
| 請求項目 | 証拠例 |
|---|---|
| 修繕費用 | 修繕見積書 |
| 清掃費用 | 領収書 |
| 営業損失 | 売上帳簿 |
| 精神的損害 | 診断書 |
表にあるような証拠を揃えたうえで、弁護士に請求戦略を立ててもらうと実効性が高まります。
所有者特定訴訟
所有者が不明な場合には、登記簿や固定資産台帳で名義を確認したうえで、裁判所を通じて所在を明らかにする手続きが必要になることがあります。
具体的には相続や滞納による所有権不明のケースなどで、相続人調査や戸籍調査を行う必要が出てきます。
弁護士は調査の代行や、必要書類の取得、訴訟提起までの全工程をサポートします。
費用と期間はケースによって大きく異なりますので、初回相談で見通しを確認しておくと安心です。
どの手段を選ぶかは、事案の緊急性と証拠の充実度、費用対効果を踏まえて決めるとよいでしょう。
初動で優先すべき対応
まずは人や周囲の安全を最優先に確認し、火災や倒壊の危険、不審者の存在など緊急性がある場合はためらわず110や119に通報してください。
現場での直接対決は避けてください。
危険がないと判断したら、離れた場所から写真や動画で状態を記録し、撮影日時が分かるように保存しておきましょう。
近隣住民への聞き取りで、普段の状況や異変の発生時刻を把握すると有益です。
その上で市区町村の建築指導課や生活環境担当課に相談し、必要に応じて保健所や消防署、警察への連絡を行政に依頼してください。
証拠は複製して保管し、いつ誰がどのように対応したかを記録しておくと後の手続きがスムーズになります。
状況が複雑な場合や所有者との交渉が必要になった際は、早めに弁護士へ相談し、法的手段も視野に入れてください。

